創作論15 言葉で世界を立ち上げること
記憶の中から紡ぐ創作論の14回目。
小説なら文章だけで、マンガは絵と言葉を用いて、世界を立ち上がらせる。
徹底的にこだわり考え抜いてこそ、イメージをつくることができる。
そのみごとな例として、大江健三郎『万延元年のフットボール』をみてみる。
冒頭からして、きらびやかな比喩表現で圧倒される。
「内臓を燃えあがらせて嚥下されるウイスキーの存在感のように、熱い「期待」の感覚が確実に躰の内奥に回復してきているのを、おちつかぬ気持で望んでいる手さぐりは、いつまでもむなしいままだ。」