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ライター。アート、写真、文学、教育、伝記など。 著書に「上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史」など。 好物はマドレーヌ、おにまんじゅう。 【Twitter】@reading_photo   info@yamauchihiroyasu.jp

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【掲載中】ヌメロ・トウキョウ12・1月号 「アートという名の果てしなき色」

「色」という観点からみて魅惑的なアーティストとその作品が、ずらり並んでます。誌面をひらけば目が楽しい。 ヌメロ・トウキョウ12・1月号、「アートという名の果てしなき色」ページで。 #ヌメロ #松山智一 #流麻二果 #今井俊介 #YOSHIROTTEN #田島一成 #Keeenue

    • 創作論15 言葉で世界を立ち上げること

      記憶の中から紡ぐ創作論の14回目。 小説なら文章だけで、マンガは絵と言葉を用いて、世界を立ち上がらせる。 徹底的にこだわり考え抜いてこそ、イメージをつくることができる。 そのみごとな例として、大江健三郎『万延元年のフットボール』をみてみる。 冒頭からして、きらびやかな比喩表現で圧倒される。 「内臓を燃えあがらせて嚥下されるウイスキーの存在感のように、熱い「期待」の感覚が確実に躰の内奥に回復してきているのを、おちつかぬ気持で望んでいる手さぐりは、いつまでもむなしいままだ。」

      • 創作論14 読者とともに書くとは

        記憶の中から紡ぐ創作論の13回目。 小説や漫画では、読者と登場人物が結託して、知見を共有する手法がある。これを見てみる。 夏目漱石『それから』より例をとると、 これを哲学にすると、死から生を出すのは不可能だが、生から死に移るのは自然の順序であると云う真理に帰着する。「私はそう考えた」と代助が云った。 地の文で難しげな理論が展開されているのを受けて、主人公の代助が「そう考えた」と言うのだ。まるで代助が、読者とともに地の文を読み進めていたかのように。 内田百閒『白子』から

        • 書くことと読むことの技術 についての本

          「文章予測」 石黒圭  角川ソフィア文庫 人はつねに予測を働かせながら文章を読んでいる。 読んでおもしろい文章とは、1行ごと1文ごとに、予測が盛んに湧き起こる文章だ。 「それでそれで?」「だれのこと?」「そんな……どうなっちゃうの?」などなど、この先に何が待っているのか、想像をたくましくしてしまうような文章がいい。 予測には2種類ある。 まず「深める予測」。いつ、どこで、誰が、何を、なぜ……といった情報のうち、何らかの欠落があって、それが気になる。 たとえば村上春樹『世界

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        • 「創作論」と「編集論」
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        • アートのことごと
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        • 文学のことごと
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        • 現在史1990〜
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        • 写真のことごと
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          【掲載中】マイナビSTART「おとな科見学」 ロボットコミュニケーター 吉藤オリィ

          皆のそして何より自分の「孤独の解消」のため、分身ロボット開発推進する吉藤オリィさん。 この「自分プロジェクト」の進め方、誰もが参照できるし勇気づけられると思う。 マイナビSTART「おとな科見学」で。 #マイナビSTART #おとな科見学 #オリィ #OriHime

          【掲載中】マイナビSTART「おとな科見学」 ロボットコミュニケーター 吉藤オリィ

          創作論13  味わい尽くしたくなる作品には、細部の充実がある

          記憶の中から紡ぐ創作論の12回目、細部について。 結論やオチなどさほど重要じゃない。プロセスを味わい尽くすことのほうがずっと大切。 これは実人生においてもそうだし、マンガ、映画、小説などの表現でも同じだ。 では小説において、プロセスにあたる一つひとつの場面を、どうしたら味わい深いものにしていけるか。 ある人が「死ぬほど悲しんでいる」と書くのは簡単だが、それじゃ小説の持ち味を使えていない。何らかの情景描写を通して、死ぬほどの悲しさを読者に感じさせてこそ、わざわざ小説で表現す

          創作論13  味わい尽くしたくなる作品には、細部の充実がある

          「この一枚を観に」 テート・モダン ジャコメッティ『ディエゴの胸像』

          人はときに、ただひとりの大切な相手と会うためだけに、地球の裏側まで出かけたりもするでしょう? 同じように、たったこの一点を観るために、どこへでも行く。そういう者に自分はなりたい。 今回はロンドン、テート・モダンへ。ジャコメッティ『ディエゴの胸像』を観に。 ロンドンの発電所が美術館に かつてロンドンの「テート」といえば、現在のテート・ブリテンのことを指しました。テムズ河畔で1897年以来の歴史を刻み、テイトの名を冠する唯一のギャラリーだったから当然です。 ところが年を追う

          「この一枚を観に」 テート・モダン ジャコメッティ『ディエゴの胸像』

          「この一枚を観に」 テート・ブリテン ウィリアム・ターナー『ノラム城、日の出』

          人はときに、ただひとりの大切な相手と会うためだけに、地球の裏側まで出かけたりもするでしょう? 同じように、たったこの一枚を観るために、どこへでも行く。そういう者に自分はなりたい。 今回は、テート・ブリテンへ。ウィリアム・ターナー『ノラム城、日の出』を観に。 国民的画家の作品、ここに眠る 英国絵画の精髄が、全館にわたってぎっしり詰まっている。それがテイト・ブリテンです。となると、どうしても外せない画家がひとりいます。英国が世界に誇る絵画の革新者。そう、ジョゼフ・マロード・

          「この一枚を観に」 テート・ブリテン ウィリアム・ターナー『ノラム城、日の出』

          「この一枚を観に」 テイト・ブリテン ジョン・エヴァレット・ミレイ『オフィーリア』

          人はときに、ただひとりの大切な相手と会うためだけに、地球の裏側まで出かけたりもするでしょう? 同じように、たったこの一枚を観るために、どこへでも行く。そういう者に自分はなりたい。 今回はロンドンのテイト・ブリテンへ、ジョン・エヴァレット・ミレイ『オフィーリア』を観に。 テムズ沿いにある 英国絵画の殿堂 ロンドンではテムズ川沿いを進みさえすれば、名所が続々と現れます。下流から順にたどればタワーブリッジ、大観覧車のロンドン・アイ、ビッグベンを擁する国会議事堂。そしてその先に

          「この一枚を観に」 テイト・ブリテン ジョン・エヴァレット・ミレイ『オフィーリア』

          「この一枚を観に」 ロンドン・ナショナルギャラリー レオナルド・ダ・ヴィンチ『聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ』

          人はときに、ただひとりの大切な相手と会うためだけに、地球の裏側まで出かけたりもするでしょう? 同じように、たったこの一枚を観るために、どこへでも行く。そういう者に自分はなりたい。 今回は、ロンドン・ナショナルギャラリーのレオナルド・ダ・ヴィンチ『聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ』を観に。  ナショナルギャラリーは、絵画の専門館。13世紀から20世紀初頭までという長い期間のヨーロッパ絵画史を、実物によって余すことなくたどれるようにできています。  ここに、どうしても欠かすこと

          「この一枚を観に」 ロンドン・ナショナルギャラリー レオナルド・ダ・ヴィンチ『聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ』

          「この一枚を観に」 ナショナル・ギャラリー ヤン・ファン・エイク《アルノルフィニ夫妻の肖像》

          人はときに、ただひとりの大切な相手と会うためだけに、地球の裏側まで出かけたりもするでしょう? 同じように、たったこの一枚を観るために、どこへでも行く。そういう者に自分はなりたい。 ではロンドン・ナショナル・ギャラリーへ、ヤン・ファン・エイク《アルノルフィニ夫妻の肖像》を観に。 ギャラリー深奥部のささやかな名画  それは、ほんのささやかな絵といっていいでしょう。サイズにして82×60センチと小柄ですし、ずいぶん奥まった一角に掛けられていますから、足早に美術館全体を見てまわ

          「この一枚を観に」 ナショナル・ギャラリー ヤン・ファン・エイク《アルノルフィニ夫妻の肖像》

          【掲載中】ウェブ美術手帖「創造の現場から」 目 [mé] のアトリエ

          「さいたま芸術祭2023」ディレクターとして奮闘中の、現代アートチーム 目 [mé] のアトリエへ。 いい空気が流れてる。 ウェブ美術手帖「創造の現場から」で。 #目mé #創造の現場から

          【掲載中】ウェブ美術手帖「創造の現場から」 目 [mé] のアトリエ

          【掲載中】ウェブ美術手帖 『美術のトラちゃん』『美術道』パピヨン本田

          名著誕生、です。 マンガで読む美術入門『美術のトラちゃん』『常識やぶりの天才たちが作った 美術道』を立て続けに上梓したパピヨン本田さんとは、さて何者か? どこを目指しているのか? ウェブ美術手帖で。 #美術道 #美術のトラちゃん #パピヨン本田

          【掲載中】ウェブ美術手帖 『美術のトラちゃん』『美術道』パピヨン本田

          【掲載中】文春オンライン 宮崎吾朗インタビュー

          ジブリパークもスタジオジブリの代表作のひとつ。園内に身を置くとジブリ作品のことがいろいろ見えてきます。 空間の「創造主」たる宮崎吾朗さんに、パークのこと、スタジオのこれから、父親への気持ち、すべて率直に語っていただきました。文春オンラインで。 #ジブリ #宮崎吾朗 #ジブリパーク 『紅の豚』の飛行機に乗り込むアトラクションを想像してみても…「全くピンとこなかった」宮崎吾朗がジブリパークを“公園の中”につくったワケ 宮崎吾朗さんインタビュー#1 #文春オンラ

          【掲載中】文春オンライン 宮崎吾朗インタビュー

          彫刻を読む  《火焔型土器》

           これを彫刻と呼ぶべきかどうかは、彫刻の定義をもすこし固めてから考え直したいところではあるけれど、日本で生まれた造形として縄文土器を原初のものとして据えるのには、異論がないはず。なかでも、燃え上がる炎をかたどったような《火焔型土器》は、最も派手な形態としてインパクト極大だ。  こんな眼を見張る造形が生まれた縄文時代とは、改めていつごろのことを指すのかといえば、1万3千年前から2千〜3千年前あたり。旧石器時代と弥生時代に挟まれた、およそ1万年ほどの長い長い期間となる。  氷期が

          彫刻を読む  《火焔型土器》

          吉本隆明 「彫刻のわからなさ」 を読む  〜まったくあたらしく世界を立ち上げることの、すばらしさとむずかしさについて

           ピカソらによるキュビズムは絵画史上の大冒険だったというのが大方の世評、というか史実になっているけれど、じつはちょっと違うと思う。  キュビズムは絵画ではないからだ。  ではキュビズムは何だというのか? あれは彫刻だ。 「彫刻とは、具体的な素材に則した視覚的表現ではなく、想像的な表現ということになる。視覚は一方向からしか物事をとらえられないが、想像力は多面的で綜合的な代りに、細部の再現を無視するものだからだ」  と、吉本隆明は短い文章「彫刻のわからなさ」で言う。  人はものを

          吉本隆明 「彫刻のわからなさ」 を読む  〜まったくあたらしく世界を立ち上げることの、すばらしさとむずかしさについて