創作論8 語り手と作中人物の「距離感」は重要だ
記憶の中から掘り起こす創作論の7回目。語り手と作中人物の「距離感」を測るのは思いのほか大事ということを、志賀直哉を例にとって。
長らく日本で「小説の神様」と称えられてきた作家といえば、志賀直哉。
志賀直哉作品の多くは自分の周りのことをつらつらと書き連ねる「私小説」であり、リアルに現実世界を描き出す自然主義的作品であるとされてきた。
私小説のフィクション面での特徴は、作家の身辺雑記ネタばかりであること。ではナレーション面の特徴はといえば、語り手と主人公が徹底して密着している