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月夜千冊

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あと何冊読めるだろう。 ふとそう思いました。 だから、 本を読もう。 もっと本を読もう。
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記事一覧

第三十三夜 「法学を学ぶのはなぜ?」 森田果

法ルールの基本的な機能は、インセンティヴの設定を通じて人々の意思決定・行動をコントロール…

第三十二夜 『青年時代』 トルストイ  月夜千冊

 トルストイの自伝的小説で、主人公は19世紀のロシアで大学生の身分にある。  食うに困らぬ…

第三十一夜 『神様の友達の友達の友達はぼく』最果タヒ 〜月夜千冊〜

 最果タヒはほんとうになんでも書ける。ジャンルを無化する。この本に載っているのは便宜上エ…

「なつのひかり」 江國香織

 江國香織の書くものは、いつも欲望のかたまりとしてある。  自分の欲望で、作品のすべてを…

第二十九夜 「キュー植物園」ヴァージニア・ウルフ 〜月夜千冊〜

 ロンドン南西部、テムズ川沿いに広がるキュー王立植物園といえば、18世紀から歴史を刻む世界…

第二十八夜 「楽しい終末」 池澤夏樹 〜月夜千冊〜

「人間が人間らしく生きて幸福な日々を送ることは全体としての自然、全体としての宇宙の存在意…

第二十七夜 「テレーズ・デスケルウ」 モーリアック

 偏りを承知で言ってしまえば、フランス文学といえば恋愛ものだ。フランスでは小説が書かれるようになって以来、恋愛こそが中心テーマとして扱われ続けてきた。まあそこは日本文学も似たところがあるけれど。『源氏物語』の昔から、日本の書きものの主題になってきたのは恋愛ごとだった。  なんで恋愛というテーマは、文学においてこんなにもてはやされるのか。  文学が描き出したいのは人情であり、その感情の機微が最もわかりやすく表に出るのが恋愛だからなんだろう、きっと。  偏りついでにもうひとつ言え

第二十六夜 「空が分裂する」最果タヒ

「ことばつかい」に興味津々だ。  目上の人に対するときは気をつけるべし、といった「ことば…

第二十五夜 「陰気な愉しみ」安岡章太郎

 なるほどこういうのが、書き手本人の心境を細かく描く「私小説」の典型なのだなあ。  月に…

第二十四夜 「雪」中谷宇吉郎

雪の結晶は、天から送られた手紙である  科学の研究ってなんだろう? なんで、どうやって、…

第23夜 「私という現象」 三浦雅士

 編集者として、また文筆家として広く活躍してきた人物の、最初の著作がこれだった。  書か…

第二十二夜 「孤独の研究」木原武一

「人生の最高の友であり、最大の敵でもある」のが孤独である。そう喝破する文芸評論家の著者が…

第二十一夜 『谷川俊太郎詩集』

「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」 と言ったのは田村隆一だけど、 きっと谷川俊太郎も、同…

第二十夜 『現代美術コテンパン』 トム・ウルフ

これが著されたのは1970年代のこと。ニュー・ジャーナリズムの旗手と目された米国のジャーナリストの手になる、美術時評だ。 その頃のノリというのか、あとは訳の問題もあるか。軽い口調にどうも乗り切れないところはあるけれど、時代の空気みたいなものがダイレクトに伝わってくるのは悪くない。ジャーナリズム作品はそこが大事。 トム・ウルフは本書で、眼前にある作品やアーティスト、当時のアートシーンをどしどし描写していく。そのなかでひとつ主眼にしているのが、難解で理論ばかり先走る現代美術作