「演ずるひと」のこと 上白石萌歌の場合
「演じる」って不思議だ。だれかになりきって時を過ごすことを、なぜこれほどわたしたちは好むのか。そこにどんな魅力や魔力があるのか。かつて聴いた言葉から探ってみたい。
上白石萌歌の場合はどうか。彼女が舞台に立つときは、その空間に観客とともに、「緊張の糸」を張り巡らせるのだという。
話を伺った2020年、上白石萌歌は舞台『お勢、断行』で、晶という令嬢役を演ずるべく稽古中だった。
過去の時代を生きたお嬢様になり切るため、聞き慣れない言葉、言い回し、所作を使いこなそうと心を砕い