山内宏泰 公式サイト

ライター。アート、写真、文学、教育、伝記など。 著書に「上野に行って2時間で学びなおす…

山内宏泰 公式サイト

ライター。アート、写真、文学、教育、伝記など。 著書に「上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史」など。 好物はマドレーヌ、おにまんじゅう。 【Twitter】@reading_photo   info@yamauchihiroyasu.jp

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記事一覧

創作論15 言葉で世界を立ち上げること

記憶の中から紡ぐ創作論の14回目。 小説なら文章だけで、マンガは絵と言葉を用いて、世界を立ち上がらせる。 徹底的にこだわり考え抜いてこそ、イメージをつくることがで…

創作論14 読者とともに書くとは

記憶の中から紡ぐ創作論の13回目。 小説や漫画では、読者と登場人物が結託して、知見を共有する手法がある。これを見てみる。 夏目漱石『それから』より例をとると、 こ…

書くことと読むことの技術 についての本

「文章予測」 石黒圭  角川ソフィア文庫 人はつねに予測を働かせながら文章を読んでいる。 読んでおもしろい文章とは、1行ごと1文ごとに、予測が盛んに湧き起こる文章…

【掲載中】マイナビSTART「おとな科見学」 ロボットコミュニケーター 吉藤オリィ

皆のそして何より自分の「孤独の解消」のため、分身ロボット開発推進する吉藤オリィさん。 この「自分プロジェクト」の進め方、誰もが参照できるし勇気づけられると思う。…

創作論13  味わい尽くしたくなる作品には、細部の充実がある

記憶の中から紡ぐ創作論の12回目、細部について。 結論やオチなどさほど重要じゃない。プロセスを味わい尽くすことのほうがずっと大切。 これは実人生においてもそうだし…

「この一枚を観に」 テート・モダン ジャコメッティ『ディエゴの胸像』

人はときに、ただひとりの大切な相手と会うためだけに、地球の裏側まで出かけたりもするでしょう? 同じように、たったこの一点を観るために、どこへでも行く。そういう者…

創作論15 言葉で世界を立ち上げること

創作論15 言葉で世界を立ち上げること

記憶の中から紡ぐ創作論の14回目。

小説なら文章だけで、マンガは絵と言葉を用いて、世界を立ち上がらせる。
徹底的にこだわり考え抜いてこそ、イメージをつくることができる。
そのみごとな例として、大江健三郎『万延元年のフットボール』をみてみる。
冒頭からして、きらびやかな比喩表現で圧倒される。

「内臓を燃えあがらせて嚥下されるウイスキーの存在感のように、熱い「期待」の感覚が確実に躰の内奥に回復して

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創作論14 読者とともに書くとは

創作論14 読者とともに書くとは

記憶の中から紡ぐ創作論の13回目。
小説や漫画では、読者と登場人物が結託して、知見を共有する手法がある。これを見てみる。

夏目漱石『それから』より例をとると、

これを哲学にすると、死から生を出すのは不可能だが、生から死に移るのは自然の順序であると云う真理に帰着する。「私はそう考えた」と代助が云った。

地の文で難しげな理論が展開されているのを受けて、主人公の代助が「そう考えた」と言うのだ。まる

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書くことと読むことの技術 についての本

書くことと読むことの技術 についての本

「文章予測」 石黒圭  角川ソフィア文庫

人はつねに予測を働かせながら文章を読んでいる。
読んでおもしろい文章とは、1行ごと1文ごとに、予測が盛んに湧き起こる文章だ。
「それでそれで?」「だれのこと?」「そんな……どうなっちゃうの?」などなど、この先に何が待っているのか、想像をたくましくしてしまうような文章がいい。

予測には2種類ある。
まず「深める予測」。いつ、どこで、誰が、何を、なぜ……と

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【掲載中】マイナビSTART「おとな科見学」 ロボットコミュニケーター 吉藤オリィ

【掲載中】マイナビSTART「おとな科見学」 ロボットコミュニケーター 吉藤オリィ

皆のそして何より自分の「孤独の解消」のため、分身ロボット開発推進する吉藤オリィさん。

この「自分プロジェクト」の進め方、誰もが参照できるし勇気づけられると思う。

マイナビSTART「おとな科見学」で。
#マイナビSTART
#おとな科見学
#オリィ
#OriHime

創作論13  味わい尽くしたくなる作品には、細部の充実がある

創作論13  味わい尽くしたくなる作品には、細部の充実がある

記憶の中から紡ぐ創作論の12回目、細部について。

結論やオチなどさほど重要じゃない。プロセスを味わい尽くすことのほうがずっと大切。
これは実人生においてもそうだし、マンガ、映画、小説などの表現でも同じだ。

では小説において、プロセスにあたる一つひとつの場面を、どうしたら味わい深いものにしていけるか。
ある人が「死ぬほど悲しんでいる」と書くのは簡単だが、それじゃ小説の持ち味を使えていない。何らか

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「この一枚を観に」 テート・モダン ジャコメッティ『ディエゴの胸像』

「この一枚を観に」 テート・モダン ジャコメッティ『ディエゴの胸像』

人はときに、ただひとりの大切な相手と会うためだけに、地球の裏側まで出かけたりもするでしょう?
同じように、たったこの一点を観るために、どこへでも行く。そういう者に自分はなりたい。

今回はロンドン、テート・モダンへ。ジャコメッティ『ディエゴの胸像』を観に。

ロンドンの発電所が美術館に

かつてロンドンの「テート」といえば、現在のテート・ブリテンのことを指しました。テムズ河畔で1897年以来の歴史

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