「セールスマンの死」11 20211009
私の乗る新幹線が名古屋駅のホームに滑り込んだ。新鮮な空気が吸えるかと乗降ドアをくぐると、温気を含んだ鰹出汁の匂いがいきなり鼻をついた。ちょうどドアの真正面で立ち食いのきしめん店がやっていて、これでもかというほど辺りに香りを放散しているのだ。
愛知県人は日頃からきしめんを食べるのかといえばそれほどでもなく、ふるさとの味という認識もほとんどないのに、舌の両脇の奥のほうがじんわり痛くなって唾液が溢れた。
なるほどこういう生理反応として、素直に涙も出ればごく自然に受け止めら