四代目さんはただの木偶の棒じゃなかったんだ、引き篭もり店主だの何だのと彼を馬鹿にしてきた連中の鼻面に、この絵を突きつけてとくと見せてやりたい。 とユウは思っ…
画材を大事そうに持ち帰ってきた四代目を見て、ユウは訝った。 これはいったい誰が使うものなのだろう。まさかご当人が? 彼が絵を描きたいだなどとは、ユウはまっ…
丹波で豆を作っていた家を出て京都の大店・桝源へ奉公に入り、当主のお世話を仰せつかってはや三年余。ユウが顔貌に湛えていたあどけなさもすっかり消えたころ、仕えてい…
今日もユウは雑事をこなす合間に、縁側から庭の鶏を眺めやっている四代目の背中を、ちらちらと見た。 胡座に頬杖を突き背を丸めた四代目は、いつ眼を向けても身じろぎ…
ユウの憤慨をよそに、四代目自身はよくいえば悠々自適、悪くとれば無気力な引き篭もりを続けた。 時折り朝晩の食事をするとき愁いを湛えた目つきをするが、それが家の…
四代目に付いたユウは、まめまめしく世話を焼いた。四代目自身は人に何も求めない、使用人にさえも。だからユウは、よかれと思うことを勝手に進めるようにした。身の回り…