山内宏泰 公式サイト
ライター。アート、写真、文学、教育、伝記など。
著書に「上野に行って2時間で学びなおす…
記事一覧
月夜千冊 第六夜『きことわ』朝吹真理子
ふたりの少女が葉山で出会い、夏の時間を過ごす。永遠子と貴子は年齢こそ違えどよく通じ合い、他の者がとうてい入り込めない世界をふたりで築いている。
ふたりだけの世界が確固としてそこにあると感じさせるのは、彼女たちの言動というよりも、叙述のしかたによる。ふたりが特別なことをしたり言ったりするのではなく、濃密な関係が理屈で説明されるのでもなく、ただただ五感に訴えかける描写を積み重ねることで世界を構築
月夜千冊 第五夜 『天の歌 小説 都はるみ』 中上健次
最近でこそさほどその名をさほど耳にしないものの、かつて彼女はまぎれもない天才として名を馳せて、昭和の演歌文化を支える大立者として君臨した。芸名を都はるみという。
都はるみの半生が、ひとりの作家によって小説として書かれている。彼女の幼少時代を、デビューのきっかけとなったコンテストの様子を、デビュー後すぐにヒット作を出し躍進していくさまを、思うところあってみずから引退を決めラストコンサートに臨