マガジンのカバー画像

読み書きのレッスン

150
寄せては返す波のように、読むこと書くことを日々学ぶのです。
運営しているクリエイター

2021年10月の記事一覧

「若冲さん」 10    20211031

 四代目さんはただの木偶の棒じゃなかったんだ、引き篭もり店主だの何だのと彼を馬鹿にしてき…

「若冲さん」 9    20211030

 画材を大事そうに持ち帰ってきた四代目を見て、ユウは訝った。  これはいったい誰が使うも…

「若冲さん」 8    20211029

 丹波で豆を作っていた家を出て京都の大店・桝源へ奉公に入り、当主のお世話を仰せつかっては…

「若冲さん」 7    20211028

 今日もユウは雑事をこなす合間に、縁側から庭の鶏を眺めやっている四代目の背中を、ちらちら…

「若冲さん」 6    20211027

 ユウの憤慨をよそに、四代目自身はよくいえば悠々自適、悪くとれば無気力な引き篭もりを続け…

「若冲さん」 5    20211026

 四代目に付いたユウは、まめまめしく世話を焼いた。四代目自身は人に何も求めない、使用人に…

「若冲さん」 4    20211025

 桝源では、当主の四代目抜きでも回るべく、すべてが算段されていった。  四代目には年端もいかぬユウという使用人がひとりつき、食事その他の一切を好きな時機にするよう言い渡された。青物問屋という商売柄、店の全体は極端に朝が早い。商いに関わらぬ者がとうてい合わせられるような時間割ではないのだ。  完全にひとり蚊帳の外に置かれた格好の四代目である。が、そのことを表立って気にする素振りは見当たらぬ。機嫌の波風はほとんど立たぬまま、至って平穏に過ごしているように感じられた。  それで

スキ
1

「若冲さん」 3    20211024

 四代目伊藤源左衛門は自室に閉じ篭り、日がな妖しげな目つきで庭に放した鶏を見て暮らした。…

「若冲さん」 2    20211023

 京都高倉錦小路にある青物問屋「桝源」当主、三代目伊藤源左衛門は元文三年に没した。  跡…

「若冲さん」 1 改    20211022

「できれば、したくないのですが……」  か弱い、けれど極細の針金入りのごとき芯ある声を発…

「若冲さん」 1    20211021

 確実に客を呼べる「ドル箱」スターは、いつの時代のどんなジャンルにも存在する。  美術の…

チゴイネルヴァイゼン 5     20211020

 Kの奥さんがこれ以上うちから何を取り立てたいのか判然としないが、しかるべきものを渡さな…

チゴイネルヴァイゼン 4     20211019

 次の夜まだ暗くなりきらないあたりから、書斎に座っていても背筋がむずむずとしてきて、どう…

チゴイネルヴァイゼン 3     20211018

 今宵のKの奥さんの用向きもまた、Kの蔵書を取りにきたというものだった。今日は語学の参考書だった。言われてみれば思い当たる。Kがずいぶん前に置いていったような記憶がある。  それにしても、なぜこうも正確に書名を言い当てられるのかは不思議だった。Kは貸し借りをつど書き付けておくようなタイプじゃなかったはずだが。  こんな夜更けにばかりやってくるのも気になった。  K夫婦には一人娘がいた。もう小学校に入ったか、これから上がるのだったか。息災を尋ねれば、奥さんはおかげさまでと応

スキ
2