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清澄白河の「AKAAKA」はなぜか夏がよく似合う場所だった

以前に書いたものが、ふとフォルダーから出てきた。ちょうどそこに書かれている界隈を歩いたばかりだったこともあって、なつかしくって再掲。清澄白河に赤々舎のギャラリーがあったころ。暑くて短い夏のイメージがある。この記事をどこかに載せたのか載せてないのかも定かでないけれど。AKAAKA姫野さん、許してくれるかな。


ギャラリーへ ~「ギャラリーAKAAKA」

 延々と連なる、敷地いっぱいに建てられた住宅はどの家も、塀の外にまで植木鉢を並べていて路上に緑が溢れている。
 下校途中なのか、ランドセルを背負った男の子たちが数人しゃがみ込んで、何やら密談中だった。
 地下鉄清澄白河駅を降りて大通りを一本入ると、そんな光景が広がっていた。路地を丸ごと生活空間にした下町の風情が、ここにはいまだ息づいている。
 右、左、右……。路地を縫うように進んでもうひとつ角を曲がると、小さな赤い旗がひるがえっていた。「ギャラリーAKAAKA」の目印だ。
 外観は開け放したガレージか町工場といった雰囲気なので、旗のサインを見落としてしまうと知らず通り過ぎかねない。
 立ち止まって建物内を覗いてみれば、造り付けの本棚に写真集がずらり置かれていた。
 澁谷征司、浅田政志、志賀理江子、高橋宗正、山内悠、高木こずえ、岡田敦……。いずれ劣らぬ人気写真家のものばかり。どれもギャラリーの運営元、赤々舎が出版した本だ。
 一堂に並ぶとなかなか壮観。吸い寄せられるように棚の前に立ち、本を手に取り眺めていると、ぎし、ぎしっと天井が鳴る。建物2階が赤々舎の事務所になっており、スタッフが歩き回れば木造の古い建物が軋んで音を立てるのだ。もともとは、ふとん卸業者の倉庫だったと聞けば、がらんとした造りにも納得がいく。
 棚の奥へと進めば、そこがギャラリースペースになっている。一面が真っ白に塗られているものの、壁はトタン板のデコボコが浮き出ているし、梁や柱、水道管は白塗りになってもそれぞれ元の形態を主張している。壁と天井の境目はところどころ木材が朽ちて、隙間ができていたりもする。空間自体になんとも味わいがある。
赤々舎で写真集を刊行した写真家が、ここで同時に展示をすることが多い。かなり広くて個性的なスペースを、各々が工夫して使いこなす。
 訪れた際に開催されていたのは、朝海陽子「SIGHT」。大きめのプリントを横一列に並べるシンプルな展示であるものの、一枚ずつの画面にしっかり情報量が詰まっているので見応えたっぷりだ。
 2階を編集業のオフィスにしている赤々舎代表の姫野希美さんは、写真家たちと自分にとってここは、実験場みたいなものだという。
 いわく、写真集はいろんな選択を重ねてひとつのモノに定着させていく「確定したもの」というイメージ。片やここでの展示は、いかようにもなる。作品としてまだ着手しはじめたばかりのものを見せてもいいし、もっといいライティングを思いつけば会期中にさわってもらってもちろんかまわない。毎回、何週間にわたって続くライブをしている感覚があるとのこと。
 ギャラリーAKAAKAからさらに足を伸ばせば、すぐ東京都現代美術館へたどり着ける。近所には最近、現代アートギャラリーの「無人島プロダクション」もオープン。品ぞろえにこだわる洒落た外観の古書店やカフェも周囲にできた。そういえば、2012年に営業開始する東京スカイツリーだってほど近い。
 隅田川の右岸、東京の東側が、新しいものを発信する地へどんどん変貌していくはずだ。


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