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日本百名湖 六 山中湖

 富士五湖のうち、ひとつだけ東に外れた位置にある山中湖は、五湖のうちいちばん観光開発が進んでいて、湖畔はどこも絵に描いたような避暑地の光景が広がっている。
 かくいう自分も、学生時代には夏になるたび、サッカーの合宿と称して足を運んだのだった。
 真夏なのに夜になると、上着が欲しいほど冷えたのをよく覚えている。湖の外周路に出没する屋台のラーメンがやけにおいしかった。それもそのはず、湖面位置の標高はおよそ千メートル。五湖で最も高地にある。
 そのころはろくに見ていなかったけれど、湖畔からは富士山がたいへん明瞭できれいに見える。
 葛飾北斎の浮世絵版画シリーズ富嶽三十六景のうちの一枚に、「凱風快晴」がある。いわゆる赤富士がドンと摺り出されたもの。
 赤富士とは夏の明け方、富士の山肌に朝陽がさして赤く染まる光景のこと。
 山中湖畔こそ、赤富士を拝む格好のポイントなのだということは、もちろんあとから知った。赤富士と、赤富士が湖面に映った様子を、いつか見てみたい。
 いつか見てみたいというときの「いつか」が、本当にやってくる確率ってどれほどだろう。

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