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大人の教養としてのアート入門  1 アートを知るとは、武器を手にすること

カルチャーサイト「cakes」が幕を閉じました。
掲載していた記事を、こちらへ移管し置いていきます。

ルノワール、ゴッホ、ピカソ、葛飾北斎……名前を聞いたり作品を観たことはあるけれど、「印象派」の意味やピカソが偉大な理由を説明できる人は少ないのではないでしょうか。大人の教養として知っておきたい西洋美術と日本美術の全体像について、全8回にわたってつまびらかにしていきます。


興味はある。でもちょっと敷居が高い気がして、二の足を踏んでしまう。
そんなものごと、世にたくさんありますよね。アートは、その最たるものかもしれません。
高尚そうだし、人や作品の名前は舌を噛みそうだし。
でも実際のところは、まるで心配など要らないものです。ちょっとかじってみれば、アートの歴史なんて意外に単純だし、キーパーソンもさほど多くありません。
案ずるより産むが易し。ここで西洋美術と日本美術の双方について、アウトラインをお伝えしていきます。読み終えるころには頭のなかに、アートの全体像がくっきり浮かび上がるようになること請け合いです。


アートのアウトラインを知ると、いいことがいろいろありますよ。
アートへの苦手意識が消えるのはもちろんのこと、いまを生きるビジネスパーソンとして、新たに心強い武器を手にした気分になれます。
というのは、海の向こうでは一定以上の地位に立つ人が、
「アートなんて知らない」
とは絶対に言えない空気があります。何かしらの社会的地位を有する人物ならば、ひと通りの文化的素養を持つのは必須。音楽や文学と並び、その最たるものがアートです。

日本では、
「文学やら芸術といった方面は、とんと明るくないですが」
と表明するとむしろ誠実そうに見えたりしますが、そろそろ風向きは変わってきました。経済やビジネスの知識だけでなく、文化的素養だって当然求められるようになってきた。教養としてのアートの重要性は増すばかりです。

アートがもたらしてくれるメリット

自分をひとかどの人物に見せるツールであるに留まりません。アートはほかにも、さまざまなメリットをもたらします。

たとえば。まずは自分のアイデンティティを改めて確認することができる。
アートの価値を決めているのは、表面的なきらびやかさなどではなく、歴史と文脈です。そのアーティストは史上どんな位置づけにあるか、どんな流れの下に作品はつくられたか。そうしたことを基準に、評価や作品価格は定まります。

アートを見る・知るを繰り返していると、歴史をきちんと踏まえ、文脈を読む力が磨かれます。好みの作品の歴史や文脈をひもとくことで、自分が大切にする価値観って何? 自分が位置を占めたいポジションは? おのずと、大局的な視野から捉え直すことができるようになります。

アートに触れると人の営みについて、大きな流れを掴めるようになるのもありがたいことです。
わたしたちは学校で歴史の授業を受けましたし、歴史小説はよく読む人も多いでしょう。ただ、それらに出てくるのは主に政治史です。
受験勉強をすると為政者の移り変わりや政体の変化、各時代のリーダーの動向にはやたら詳しくなる。けれど、それぞれの時代における人の暮らしや考え方をよく表すのは、むしろ文化史のほう。アートには、人の営みや思想が凝縮して表れます。真に歴史を知るには、アートをふりかえるほうが有効なのです。

くわえてもちろん、たくさんの「美」に触れられるというのは何よりですね。美しさと出逢うのは人間の根源的な欲求にして歓びです。
人は視覚から得る刺激が圧倒的に多い生きもの。視覚に特化した最良の体験を提供しようと、古来アーティストは苦心と工夫を重ねてきました。せっかくのその果実、味わわずにおく手はありませんよ。

ビジネススキルも手に入る

ものを見る目が養える。自分なりの価値体系が築き上げられる。眼前にあるものを存分に愉しみ味わえるようになる。
アートから得られるこれらのことは、昨今、仕事の現場で求められるものと大いに重なっていますよ。
問題の発見と、独自の価値に基づく判断と、課題を前向きに遂行し抜く能力。そんなビジネススキルも、アートを身中に取り込めばおのずと手に入るわけです。

「でも、ほとんど知識ゼロだし……」
「知っていることといえば印象派、ピカソ……、あと何かあった?」
という向きも、心配ありません。専門家でもないかぎりアートの知識なんて、じつは誰もがだいたいそんなところです。
実際のところ、印象派という言葉を知っているだけでもバッチリです。いいところを突いていますよ。印象派は日本でやたら人気が高いというだけではなく、アートの流れにおける最重要の画期点ですから。
あとは印象派周辺のアーティストの名前さえ押さえたら、
「アート、だいたいわかってる」
と言ってまったくさしつかえありません。
ここで知っておきたい名前を挙げるなら、

モネ
ルノワール
ゴッホ
ゴーギャン
セザンヌ
マティス
ピカソ


の計7人、といったところでしょうか。聞き覚え、なんとなくありますよね。 彼らがキーパーソンなのはなぜなのか。何を考え、どんなことを為したのか。これからこのシリーズで見ていきましょう。

<今回のまとめ>
●いまこそ生きていく武器、教養としてのアートを身につけよう
●アートを知れば、自分自身を見つめ直せるだけでなく、社会を知ることができる
●印象派とその周辺のアーティストの名前さえ押さえておけば十分


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