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読み書きのレッスン 「微笑うセールスマン」プロット

●1幕●

(オープニングイメージ)
シーン1
(TPO)夜中、自宅の駐車場
(出来事)営業先から帰宅した竜馬が車を停める。運転席で営業報告書を書こうとするが、書くことがなく丸めて放り投げる。
(感情と葛藤)⤵️ 営業成績ゼロ。自分はこんなダメなはずないのに、、。

(セットアップ)

夜中、自宅前
荷物を抱えて竜馬、玄関へ向かう。
⤵️疲れ切っている。境遇を苦々しく思っているのがアリアリ。


夜中、ダイニング
竜馬、温めた焼酎を飲みながら愚痴をこぼし、クダを巻く。
⤵️愚痴と営業成績が取れない言い訳はとめどない。ただ聞いてほしいが、妻に対してついひどい物言いになってしまう。

(テーマの提示)

夜中、ダイニング
妻・倫子が宥める。見ているしわかっている、あなたは決して孤独じゃありませんよ。
⤴️理解者は身近にいるのに、竜馬は気づけない。


朝、ダイニング
朝食を食べながら今日の計画を話す夫婦。営業はもうやめにしたいと社長に直談判するつもりだ。前借りもお願いしていただけないかと妻が申し出る。
⤴️うまくいくんじゃないかという気になる。ただ、希望の話をしているのに妻が具体的な話で水を差すのが気に入らない。


朝、ダイニング
夫が出かけたあと、凜子は息子に電話する。今夜、父と仕事帰りに食事をしてきてくれるよう頼む。
⤴️妻は家族をつなげようとする。息子は尻込みしている。


(悩みのとき)

午前、本社のある駅前のルノアール
コーヒーを前にブツブツとひとりごちて自己暗示をかける。オレがどれだけこれまで会社に貢献してきたか。
⤵️思い返すほど貢献がないことに薄々気づく。記憶を捏造してきたことを自覚するつらさ感じる。


午前、コンビニ前
不安が昂じて、ワンカップを煽る。
⤴️怖い。が一息つく。
〉〈 = 酒なんていけない、でもそれくらい無頼なほうが大物だ。昔はそんなものだった、、。 

(きっかけ)

昼前、本社前 
気後れして足が止まる。が、ズバリ言ってやると気合を入れ直して訪問の決意を固める。
⤴️むりやりにでも自分を奮い立たせる。が、本当は「お荷物」だという引け目があるので弱気が消えない。

(第一ターニングポイント)
10
本社オフィス、社長室
営業を外して内勤にしてくれと頼むも、逆に仕事を休むよう言い渡される。
⤵️生活に困るしアイデンティティも否定される。竜馬は「なぜだ?」と思うが、社長からすると当然の措置。 


●2幕・上●
(サブプロット)
11
息子の小学生時代、家の裏手
小学生の息子が壁を相手にキャッチボール。帰宅途上の父が見かけて、ピッチングフォームを細かく指導。
⤴️息子はかまってくれてうれしい。が父の尊大さと押し付けがましさに不満も。

12
息子の中学生時代、ダイニング
進学に悩む。三高の推薦ならもらえると両親に相談。父は「野球で一高の推薦くらいとれないのか、情けない」と言い放つ。
⤵️息子は自分の不甲斐なさと、自分を見てくれてない悲しさに包まれる。大した人間じゃないのに、いつも父は過大な期待をしてくる。

13
息子の大学生時代、ダイニング
就職先を小さい広告代理店に決めた。父はその会社を銀行員の叔父に調べてもらい、「お前が行くようなところじゃない」と言い放つ。
⤵️プライドを踏み躙られた息子は憤慨。本当はその会社の正社員でもなく臨時雇いに過ぎない。自分の不甲斐なさにも落胆。

(お楽しみ)
14
夕方、自宅最寄りの駅前にある洋食店
父との食事の約束を息子はすっぽかす。
⤵️息子からすれば復讐心もどこかにあった。時を経ても父は期待をかけたまま、息子は心が離反するばかり。

15
夜、自宅最寄りの駅前にある洋食店
父はひとりビールを飲み続ける。ブツブツひとりごちながら。息子と釣りに行った思い出を反芻する。
⤴️
たくさん釣れたものだった。父は遊びも一流だと尊敬されたんじゃないか。ボートの上では自分の哲学をたっぷり聞かせてやったものだ。が、伝わっていたのかどうか。

16
夜、自宅最寄りの駅前にある洋食店
ビールを飲み続ける。声が大きくなっていく。オレは神奈川のほうじゃ顔なんだ、戸塚で1日に40万の売り上げを出したこともあると騒ぐ。ていよく店を追い出される。
⤴️自慢話を自分の中で反芻して気持ち良くなった。武勇伝を知ってもらいたい、が自分でもそれが作り話だとは薄々気づいている。

17
夜、自宅ダイニング
息子に電話をかけている母。なんでお父さんとの約束に行かなかったの、と問い詰める。気が重いんだと反論する息子。
⤵️父さんとは話が通じないんだ、小さい頃から話を聞いてくれた試しがないと息子は訴える。とりなしたい母だが、言葉が見つからない。


(ミッドポイント)
18
深夜、ダイニング
酔って帰った竜馬、焼酎を自分で電子レンジで温め飲みながら、息子を期待外れな奴だと罵る。
⤵️誰も信じられない気分で自暴自棄になる。妻はとりなそうとするがとりつく島なし。

19
深夜、ダイニング
息子とスマホの動画通話をつなげる妻。息子は「この家は嘘ばかり」と父をなじる。父は「出てけ!」と応酬。ダメな奴らは、大物で人に好かれるオレの前から失せろ。
⤵️どいつもこいつも、と怒り心頭。家族それぞれが、自分の信じるものしか見ようとしない。


●2幕・下●
(迫り来る悪い奴ら)
20
午前、ダイニング
朝食をとりながら竜馬、ウーバーを始めるつもりだと言い出す。
⤴️経済的に行き詰まり、背に腹は変えられない。営業と似ているからやれるはず。やり方や成算を息子に訊きたかったところだが。

21
午後、商店街
自転車を買いに行く。
⤴️電動アシスト付きを手に入れる。仕事ができる高揚感、ものを入手する喜びと同時に、出費の痛さ。

22
数日後の午後、自宅前
ウーバーの注文が初めて入り、集荷に赴く。
⤴️
スマホを必死にいじりながら出陣。正直しくみや操作は理解できていない、が、新しいことをする愉しさが勝る。

23
午後、商店街
ピザ店に品を取りに行く。誰にもすぐ好かれる特技を発揮しようと話しかけるが、適当にあしらわれる
⤴️若い奴らは失礼だと思うが、仕事の遂行に全力。

(すべてを失って)
24
午後、商店街
店裏に停めた自転車がない。盗まれたよう。ピザを手にトボトボ家に帰る。
⤵️
全てを失った。なぜこんな運命なのか、いや単に鍵もかけない自分の落ち度なのだが。

(心の暗闇)
25
夜、自宅ダイニング
椅子に座りうなだれる竜馬。これまで自分をごまかしてきたが、誇大妄想だったといよいよ悟る。
⤵️
自己弁護のとっかかりすら見当たらない。

26
夜、自宅ダイニング
妻は慰めるが、「ただ、お金はどうしましょうか」という。机の上に住宅ローンその他の封書が積まれている。
⤵️金の話で追い討ちをかけられる。言い返してプライドを保ちたいが、何も言うことがない。 

(第二ターニングポイント)
27
夜、ダイニング
竜馬、焼酎を温めて一気に煽る。盛大にむせる。そのまま咳込みながら倒れる。
⤵️肉体的苦しみに溺れる。

28
深夜、家の前
救急車が到着し竜馬を乗せる。肺炎の疑い。
⤵️肉体的苦痛とともに、自分はここで終わるのかという精神的苦痛に包まれる。ついてこなくていい! 言うと素直に従う妻。


●3幕●
(フィナーレ)
29
数日後の夕方、町の「セレモ」
竜馬の告別時間として数時間小部屋が開放されている。人は誰も来ない。
⤵️
愛される男のはずではなかったのか。息子は少し恥ずかしく思うが、母は達観。

30
夕方、セレモ
生命保険が下りてもろもろの支払いは済ませることができた。そのことを母は繰り返し息子に喋りながらただ、座っている。
⤴️ もう思い煩うことはないと淡々としている母。 

31
夜、斎場の食堂
弁当を食べる母と息子。穏やかに父の話をする。病室で看取ったとき、最後の一言が結局何を言っているのかわからなかった。ふだんあんなに怒鳴り声響かせていたのに。
⤴️どうせそう大したことじゃない、と笑う。何もない人生だったんだよと息子、それが何よりじゃないのと母。

32
夜、斎場の食堂
父の思い出話を続ける。父は一枚の写真をずっと飾ってたと母が披歴。3歳の息子が、写真を撮られるのが怖いと嫌がっている写真。
⤵️写真なんかじゃなく、本人をちゃんと見てくれたらよかったのにと息子。 

(ファイナルイメージ)
33
夜、閉場直前の斎場
棺の中を妻と子が覗き込む。眉間のしわがとれ、思いのほか穏やかな死顔。妻は言う。「そう、ほら悪い人じゃなかったのよ」
⤴️「悪い人じゃなかった」という美点で満足か。死んだあとにようやく訪れる平穏で幸せか。


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