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【本気で未来をつくるひと】       大宮エリー[インタビュー]      「こどもエリー学園」開校!       学ぶのは「ことば」と「アート」のこと

 作家、演出家、映画監督、テレビ・ラジオ・ウェブメディアでのパーソナリティ、そして近年は絵画を中心としたアーティストとして世界中で個展を開催など、めまいがするほど多彩な活動を繰り広げてきた大宮エリーさんが、さらなる試みに取り組んでいる。
 このたび「こどもエリー学園」なるオンライン学校を始めるのだ。

https://kodomo-elliegakuen.com/about


 大宮エリーさんは今春にも西武渋谷店の特設会場で、描き下ろし作品たっぷりの絵画個展「new world for you!!!」を開いたり、2冊の写真作品集『SACRED SPACE』『SHASTA』を刊行したりと、表現者として目一杯に動き続けていたはず。それなのになぜいま加えて、子どもの学校を思い立ったのか。
 ご本人に訊いてみると……。

「子どもの学校もやってよ、やらないの? けっこうたくさんの人から、そう言われていたんですよね。たしかに2020年から、大人のクリエイティブを鍛える『エリー学園』は開いていて、幸い好評をいただいています。子どもにも、いや子どもにこそ、そういう学びの場があるべきだなとは、わたしもつねづね思っていたので、じゃあ思い切って開校しちゃおうと。既存の学校や塾を否定するつもりはまったくないけれど、そこでは賄い切れないこともあるだろうから、補っていきたいと考えました」

 とのこと。
 子どもエリー学園で学ぶのは、「ことば」と「アート」であるという。なるほど言葉は理性を司るものだし、アートは感性を養ってくれる。クリエイティブな力を養うには、このふたつにフォーカスするのは効果的に思える。

「やっぱり誰だって、思いやりのある人になりたいだろうし、子どもにはそう成長していってほしいんじゃないですか? じゃあ人を思いやるには何が必要か? 想像力でしょう。想像力を培うには『ことば』と『アート』の力をつけるのがいい。それなのに、気づけばこのふたつは学校の現場や社会全般で、どこか蔑ろにされてるところがあるじゃないですか。
 10代のころに学んだことって、そのまま生きる力に直結したりするから、子どものうちに『ことば』と『アート』との親しみかたを知っておくのは大事だと思います。私自身、これまでものを書く仕事をたくさんしてきたけれど、書くことのベースは学生時代にした勉強で得たものだけでなんとかしてますからね。大学受験するまでのほうが、それ以降よりずっとたくさん本を読んでいたし、古文漢文で得た知識はいまだに役立っていますよ。
 学校教育はどうしても画一的な教え方にならざるを得ないところはあるんでしょうけど、多感な時期にその子の想像力の芽を摘無用なことはしちゃいけない。そういえばわたしは学生時代に家庭教師をやっていたんですけど、教えていた子は算数が苦手だった。苦手というか、やる気が起きないって感じだったんですよね。『なんで算数なんかやんなきゃいけないの?』ってよく尋ねられましたから。
 その子は「スターウォーズ」が好きだったから、『あのライトセーバー、作ってる工場をわたし知ってるよ』と気を引いてみた。『どうやって作るか知ってる? あれ作るには、算数がすごく必要になるんだよ』と言ったら、えっ、そうなの? そうかそのために算数ってあるんだ! と感心されて、とたんに勉強するようになったんですよ。安易にウソをつくのは気をつけないといけないことですけど、モチベーションを上げていくのは大事ですよね。子どもの学校では、そういう疑問に応えていくこともやっていきたいです」

 学校は隔週90分の授業がオンラインで開かれる予定。毎月2回の通常授業は、お題の会と発表会で構成されている。毎月のお題はたとえば、
「名刺をつくろう!」
「自分にキャッチコピーをつくろう!」
「わくわくを撮ってこよう!」
 といったものが並ぶ。これまでの多彩な活動のなかで、ワークショップや授業の類を手がけた経験も多数ある。その知見を活かしたカリキュラムだ。

「以前テレビ番組の企画で、小学生に授業をしたことがありました。そのときやったのが、自分の名刺をつくってみようというもの。自分と他者をよりよく知るための一環として、どんなかたちでもいいから自分を紹介する名刺をつくって人に渡してみるのです。
 そのとき生徒のなかに、靴の空き箱を真っ黒に塗って持ってきた子がいたんですよね。たまたま交換相手になってそれを受け取った子に「どう思った?」と聞いたら『きたないなって思った』って。渡したほうの子にどう思われたかったか聞くと『かっこいいと思ってもらいたかったのに……』。自分の思ってることがそんな簡単には伝わらないってことを、体験してもらえたかなと思う。だから想像力を駆使して、伝える努力をしないといけないんですよね。
 これは相手の発信を受け止める練習にもなります。いまはSNS全盛の時代になって、誰もが発信できるのはいいんだけど、とかく承認欲求ばかり先走ってしまうことになってるじゃないですか。その前に、相手を認めてあげることもしてるかな? と問いかけたい気持ちはある。『いいね』ボタンを押すだけよりもうちょっと深い受け止めをできないものかなと思いますものね。
 そのテレビ番組で、ワクワクを撮ってみるという授業もしました。デジカメを配って、自分がワクワクするものを好きに撮ってきて発表してもらう。ひとり、時計を撮ってきた子がいて、なんで? と訊いたら『給食の時間がいちばんワクワクするから、まだかな? って一日に何度も見ちゃう』と教えてくれました。
 ふだんクラスでぜんぜんしゃべらない子にも写真を見せてもらったら、石ころが写っているんですよ。どういう意味があるの? って訊いたら、「アリ」と答えてくれた。アリから見た石なのだそう。地べたから見たアングルで撮った写真はたしかに迫力があって、アリから見たら石ころもスゴいものに見えるんだろうなって想像できてよかった。
 私たちはとかく、決まりきった尺度だけで人を測ってしまいがちじゃないですか? 小さいころなんかとくに、スポーツも勉強もできてひょうきんだと人気者になれるとか、かなり画一的。それ以外にも人はいろんな個性を持っているよということに、ちゃんと気づけたらいいなと思って、カリキュラムを考えているところです」

 通常授業とは別に、月に1回は特別授業も開講。こちらは「おもしろい大人」と題して、学校の先生からシェフに転身した人、人間国宝の漆職人……。大宮エリーさんの幅広い人脈から、おもしろく世を生きている人物が続々登場する。

「昔は近所に名物おじさん・おばさんとかがいて、変わった大人と接する機会もありましたけど、いまはそういうのもなくなったと聞くので、おもしろい大人をどんどん子どもにぶつけていこうと思っています。授業を通していろんなことや人に出逢って、ああ世界ってけっこう広いんだなと感じてもらえたら何よりですよね。わたしも小さいころはいじめられていて学校に生きづらくなった時期があったんですけど、そのとき通った塾が救いになりました。そこでは自分が否定されなかったから。
『こどもエリー学園』が、もうひとつの居場所になって、救われる子がひとりでもいるとしたらそれだけでうれしい。オンラインだから、北海道の人と九州の人が知り合って友だちになれるかもしれないですしね。
 コロナ禍が続いて、子どもたちは自由に出かけられなかったり、学校行事もなかったりして思い出がなかなかつくれないって聞きます。せめて『夏もあまり出かけられなかったけど、エリーの学校ではいろんなことしたな、おもしろかったな』と思ってもらえたらいいですよね」

 学校参加対象者は小学生~中学生。8月7日より開校予定で、初期メンバー募集期間は7月25日まで。
・専用サイト https://kodomo-elliegakuen.com/about
・大宮エリーnote https://note.com/ellieomiya
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