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読み書きのレッスン

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寄せては返す波のように、読むこと書くことを日々学ぶのです。
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#伊藤若冲

「若冲さん」 50   20211210

 若冲作品をほうぼうに掲げた効果は、まずもって市場の住人たちのあいだに見られた。  こっ…

「若冲さん」 49   20211209

 相国寺の大典禅師から、若冲はこうして首尾よく三十幅の画を取り戻した。  間髪入れずその…

「若冲さん」 48   20211208

 寄進したすべての画を取り戻し、錦通りを盛り立てる看板代わりにしたい。  若冲は自分の目…

「若冲さん」 46   20211206

 他に錦通りには、魚介類を若狭から仕入れて売る店もある。  その店先に立ったときは若冲、…

「若冲さん」 45   20211205

 錦通りの東端近くには、若冲の生家・桝源と並ぶ青物大店がある。  長紙の簡易な地図上のそ…

「若冲さん」 44   20211204

 歩を進めては紙に簡略な画を描き足し、また歩いては描きを若冲は繰り返した。  ユウが両手…

「若冲さん」 43   20211203

「なるほどこれはまた、ずいぶん寂れたな。  私や弟の小さい時分など、昼間は通りをまっすぐ歩けやしなかったものだが」  何らか方策を思いついたと言い出した次の日の午前。  若冲はユウを伴い、さっそく錦通りの東の端に立っていた。  とっくに店が開いている時間というのに、やはり人影はまばらである。  通りはここから真西へ向けまっすぐ続いている。  両側に連なる店を眺めつつ、ふたりはそぞろに歩き出した。  若冲の手には、携帯用の墨と細い筆があった。  ユウは、両手をうんと広げた

「若冲さん」 42   20211202

 若冲にはなんの躊躇もない。  己の生まれ育った錦通りが困っていれば、なんとかしたいとふ…

「若冲さん」 41   20211201

 錦はお上に目を付けられ「終わった」市場だ、そんな噂もまだ絶えない。  若冲の生家・桝源…

「若冲さん」 40   20211130

「いや本当にもう、自分ごとの用向きや願いなど、何もないのだ。  幼少のころより何も成せな…

「若冲さん」 39   20211129

「こちとら余生を送る隠居の身。日々することもないのでな。  こんなときの捨て駒にでもなれ…

「若冲さん」 38   20211128

 事ここに至って、奉行所はかなり追い込まれてしまった。  京の台所を根っこで支える近隣有…

「若冲さん」 37   20211127

 錦市場営業停止の沙汰を出した奉行所に春先、相国寺・大典禅師から書状が届いた。  私信の…

「若冲さん」 36   20211126

 閉鎖へ追い込まれた錦市場を救うべく、若冲はどんな手を打ったのか。  ずいぶんな搦め手である。  まず、壬生や九条など京近郊の有力農村へ出向き、地域の長と直談判した。  市場再開時の有利な商条件を約すのと引き換えに、奉行所宛の願書を書かせた。  内容はこうだ。  天子様や京の守護者のため、我ら農家は日夜作物を拵えている。  良質な品を安定して届ける本分を今後もまっとうしたい。  それには良き市場が不可欠。なのに、頼りの錦市場が開いていない。  我らにとって大打撃である。