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読み書きのレッスン

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寄せては返す波のように、読むこと書くことを日々学ぶのです。
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2021年12月の記事一覧

「みかんのヤマ」 12 一家の転落 20211231

 みかん山の中腹、陽当たり抜群のうちの畠は、あっさり農会長に明け渡された。  これで崩れ…

「みかんのヤマ」 11 母の決断  20211230

 母はあの日以来、呆然としたっきりだ。  もともと他所の人と屈託なく交われるタチじゃなく…

「みかんのヤマ」 10ふたりぎりの葬送  20211229

 はい。わがままは言いません。  山のみなさんはどうか宅のこと気にせず、お仕事を続けてく…

「みかんのヤマ」 9「山の王」の威厳  20211228

 農会長が言わんとするのは、いまが収穫と出荷のピークであること。  どの畠も人員総出で、…

「みかんのヤマ」 8グレーの背広の農会長 20211227

 甲斐甲斐しく父の手伝いに精を出すのが常だった母は、奉ずる先を急に失って身動きすらできな…

「みかんのヤマ」 7父の転落  20211226

 赤シャツ教頭はわたしの名を呼び、荷物を持ってすぐ教室を出るよう告げた。  訳のわからぬ…

「みかんのヤマ」 6赤シャツの教頭   20211225

 細いわりによく通る若井先生の声が、教室内を快く吹き抜ける。  ということで、明治の文学のうち、ほらこうして皆の教科書に載っている作品といえば、夏目漱石『坊っちゃん』です。  知ってるでしょう? もちろん全国的に有名だけど、愛媛じゃなおさら。舞台になった松山ではいまだ坊っちゃん列車が走っていたり、坊っちゃん饅頭まで売ってますものね。おもいきり、あやかってます。  ただ、これから実際に作品を読んでいくと、ん? と思うかもしれない。だって漱石はけっこう松山の悪口を書いているんで

「みかんのヤマ」 5現国の授業   20211224

 え、どういうこと?   思わず身を起こして向き直ったわたしの口から出たつぶやきは、鳴り…

「みかんのヤマ」 4父の転落   20211223

 眼を薄く開く。意識が手元へ戻ってくる。まず視界に入るのは束ねられたカーテン。その向こう…

「みかんのヤマ」 3魔王の囁き   20211222

 わたしの内側にも、いまは思い煩うことが何もない。すてきだ。  うちの中学は二学期制で、…

「みかんのヤマ」  2 完璧な幸福  20211221

 うん。完璧に幸せだ。いま、まさに。  教室の窓際の席に座りながら、そうおもった。  三…

みかんのヤマ  1黄金色のみかん山 20211220

 豊後水道に面した宇和湾の水は蒼く、強い陽に照らされていつも温い。  澄んで甘そうな海水…

「若冲さん」 50   20211210

 若冲作品をほうぼうに掲げた効果は、まずもって市場の住人たちのあいだに見られた。  こっ…

「若冲さん」 49   20211209

 相国寺の大典禅師から、若冲はこうして首尾よく三十幅の画を取り戻した。  間髪入れずその画を錦通りに運び込み、看板風に取り付ける算段をつけていく。  どうせ店も暇で、手が余っておるだろう?  そう弟を説き伏せ、桝源の若い衆を二、三人借り出し、設置を手伝わせた。  通りの要所要所の店前に、簡便な木製の立板をつくり、そこに画を貼り付けていく。  青物屋の前には緑のしたたる画が掛かり、豆腐屋の前には白色が際立つ画が掛かった。  川魚専門の屋号の前には、鮎が生き生きと泳ぐ画だ。

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