「若冲さん」 27 20211117
相国寺の広間に若冲が並べた自作の画は、全部で三十幅あった。
「これまた、ずいぶん生んだこと……」
見せつけられた大典禅師が口を開いた。
ふだんは高僧らしく言葉にきっと含みと深みを持たせるのに、いまはただ真っ直ぐ感嘆を漏らす。
大典が驚かされたのは、室内を埋めた画の物量ではない。
ありとあらゆる動植物がここでいきなり解き放たれ、眼前に踊り出るさまを幻視させられた。
そのことに、たじろいだ。
まるで寺内が一瞬にして、京の都が建立される以前の太古の森に還ったかのよ