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月夜千冊

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あと何冊読めるだろう。 ふとそう思いました。 だから、 本を読もう。 もっと本を読もう。
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2020年5月の記事一覧

第十六夜 『ケンブリッジ・クインテット』  ジョン・L・キャスティ

 1949年のこと。ケンブリッジ大学クライスト・コレッジでディナーが開かれた。主宰は英国きっ…

第十五夜 『遊びと人間』 ロジェ・カイヨワ

「文化はあそびの形式の中で発生し、はじめのうち、文化は遊ばれた」  ホイジンガが『ホモ・…

第十四夜 『ホモ・ルーデンス』 ホイジンガ

 遊びは文化より古い、のだという。  人類が共同生活を始めたときから、その行動にはすべて…

第十三夜 『しぐさの日本文化』 多田道太郎

「ある文化は、それをになう人びとがたがいにたがいをまねあうことによって、成りたつともいえ…

第十二夜 『日本の思想』 丸山眞男

 戦後を代表する政治学者の丸山眞男が、新書のかたちでコンパクトに考えをまとめた一冊。タイ…

第十一夜 『コレクションと資本主義 「美術と蒐集」を知れば経済の核心がわかる』 …

第一人者たちの軽やかさ  アートと経済。このふたつこそ、今を生きる私たちの必須教養である…

第十夜 『二つの文化と科学革命』  C・P・スノー

「人びとの知的生活はますます二つの極端なグループに分れつつある。  文系か理系か、それが問題だ。  そう大騒動するのが、高校生の通過儀礼。あたかもこれが生涯を左右する運命の分かれ道であるかのように。  それほどの大問題なのか疑問はあるけれど、ともあれ文理の別ということについて深く掘り下げて論じたのが、20世紀の英国を代表する知性の一人、C・P・スノー。  科学者であり、官僚経験もあり、評判をとった小説をいくつも書き、世のあらゆる事象を語る評論家。マルチな活動をしていた

第九夜 『ニュー・アトランティス』ベーコン

「わが学院の目的は諸原因と万物の隠れたる動きに関する知識を探り、人間の君臨する領域を広げ…

月夜千冊 第八夜 『時間』  吉田健一

うねうねと続き、始まりも終わりもないような文章が吉田健一の特長で、そこが最大の味わいどこ…

第七夜 『詩学』  アリストテレス

 アリストテレスがここで指す「詩」とはおもに悲劇のことだけれど、いまでいえば詩や小説をは…

『天の歌  小説 都はるみ』 中上健次

 かつて彼女はまぎれもない天才として名を馳せて、昭和の演歌文化を支える大立者として君臨し…

月夜千冊 第五夜 『北園克衛詩集』

徹底的なものだけが、徹底的に美しい。 と、ある小説家は言った。 まったくそのとおりだとお…

第四夜『きことわ』 朝吹真理子

 ふたりの少女が葉山で出会い、夏のひとときを過ごす。永遠子と貴子は年齢こそ違えどよく通…

第三夜 『思い出トランプ』  向田邦子

 心理をたどるのが小説の仕事。  だとすれば、向田邦子の短編群は、小説の本分にきちんと則っている。  鮮やかに、心理だけを見つめている。 「かわうそ」という一編では、出だしからして、 「指先から煙草が落ちたのは、月曜の夕方だった。」  とくる。ひとりの男の身体的な変化、そして呆然と頭の中を考えだけ巡っている感じが、一行でみごとに描き出される。  登場人物が活動し何かを思うから、初めて作品世界が立ち現れてくるのだという感触もある。何かが書かれないかぎり、